技術系新卒ENTRY
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project story_01

プロセス適正と高性能
を両立する“液状”磁性材料を生み出し
新たなビジネスとして確立させる

磁性材料とは、文字どおり磁気を帯びる材料のことです。磁気は、電流を整えたり電磁波を減衰させたりすることに有効で、インダクタや電磁波シールド、トランスなどの様々な電子部品やデバイスの製造に使われています。味の素ファインテクノでは、 プロセス適正と高性能を両立する“液状”の磁性材料開発に成功し、半導体パッケージの高性能化や省エネ化に貢献しました。前例がないなかでどのように開発を進めたのか、プロジェクトの過程ではどのような壁に突き当たり、それをどのように克服したのかなど、開発着手から事業化までのストーリーをご紹介します。

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    研究開発部第一グループ 環境情報学府
    環境生命学専攻
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    研究開発部第一グループ 理学系研究科
    化学専攻
    ※掲載内容は取材当時のものです
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    研究開発部第一グループ 理工学研究科
    工業化学専攻
    ※掲載内容は取材当時のものです
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    研究開発部第一グループ 工学系研究科
    化学生命工学専攻
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STORY_01

可能性を信じて研究を
続けたことで
新たな可能性が広がり
好機を掴んだ

当初、当社における磁性材料は一つの研究テーマに過ぎず、製品化には至っていませんでした。味の素ビルドアップフィルム®(ABF)開発を通じて培ってきた分子設計や配合設計などのコア技術を応用し、使用する材料を置き換えれば磁性材料も開発できるはず――こう考えていた一部の社員が細々と研究を続けていたのです。転機となったのは、とある展示会です。部品メーカーのお客様から「フィルム状の磁性材料を開発できないものか」というご相談を持ち掛けられました。この言葉を受けて私たちは磁性材料の開発に乗り出しました。担当メンバーは、ABF事業で得た知見を活かしつつ、AFTINNOVA Magnetic Film®の開発をまずは成功させます。それを携えて当社が磁性材料分野への参入を果たすと、さらなる可能性を引き寄せることになりました。それが2017年に大手メーカーから寄せられた、液状磁性材料の開発に関する相談です。このお客様とは他製品を通じてお付き合いがあり、当社が磁性材料も手掛けていることに着目し、声をかけてくださったのです。

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STORY_02

ネットワークに不可欠な
半導体パッケージの
省エネ化を目指して
未知の領域に踏み出す

この相談の背景には、5Gに代表されるネットワークインフラの高速化・大容量化があります。ネットワークを高速化・大容量化するためには、インフラを構成する基地局やサーバに搭載するCPUを高性能化する必要があります。ただし、CPUだけを高性能化すると使用時の消費電力が大幅に増えてしまいます。CPUを高性能化させつつ消費電力を抑制できる新技術をお客様は模索していました。実現のカギを握る技術として浮上したのが、液状の磁性材料です。当社では担当チームを組成して開発を目指すことになりましたが、プロジェクトを進めるにあたり、大きな障壁が。液性と磁気特性を両立させた磁性材料の開発は、社内はもちろん社外にも参考にできる前例がなかったのです。その一方で、私たちは既に液状の接着剤を製品化していました。そこで、液状のエポキシ樹脂の扱いに精通した社員をメンバーに招きます。エポキシ樹脂に「磁性粉」という原材料を混ぜることで試作を始めましたが、次なる障壁に直面します。

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STORY_03

課された厳しい条件を
クリアすべく
原材料メーカーにも協力を
仰いで開発を進める

次なる障壁は、製品に求められる粘り気(粘度)の水準がハイレベルだったことです。通常の接着剤製品の粘度の許容範囲を50~150と仮定した場合、新たに開発する液状磁性材料の粘度は90~110という狭い範囲に収めなければならないイメージです。実現に向けて幾度も試作を繰り返したメンバーは、これまで使っていた原材料(磁性粉)では要件を満たせないという事実に直面します。この磁性粉はある原材料メーカーの既製品でしたが、粉粒の大きさにバラつきがあり、粒の形状に凹凸があるため、エポキシ樹脂に混ぜると粘度が安定しませんでした。お客様から提示された粘度を実現させるためには、粉粒の大きさを揃えつつ、形状を滑らかにする必要があることが発覚したのですが、ここまで高度な品質の磁性粉は原材料メーカーの既製品には存在しません。そこで開発メンバーは、原材料メーカー側のスタッフとともに、液状磁性材料の生産に適した磁性粉の開発に、ゼロベースで乗り出します。しかし、事業化まで目指すとなると、高品質な磁性粉を開発するだけでは不十分でした。原材料メーカー側には、安定的に量産できる体制を整備してもらう必要もあったためです。メンバーは、原材料メーカーの量産体制の整備までフォローを続けました。

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STORY_04

新たに発覚した問題には
関係各社の力を結集
不断の努力が実を結び
ついに正式採用が決定

お客さまから相談を受けてから、実に様々な試行錯誤を繰り返した末、ついにお客様側の製造工程で実際に試作品を使っていただく段階まで辿り着きました。ところが、ここでさらなる難題にぶつかります。お客様の製造工程では磁性材料を薬液処理するプロセスがあるのですが、この薬液によって、液状磁性材料に含まれる磁性粉が想定以上に溶解してしまうことが判明したのです。しかし、液状磁性材料を使った半導体パッケージ製造はお客様にとっても初の試みです。磁性粉の溶解が品質にどれほど影響するかは未知数。そこでお客様やいくつもの協業先と協議を重ね、最終製品に求めるクオリティや試験法を定めました。その後、お客様の製造工程におけるデータ採取と検証を繰り返し、膨大なデータとともに品質に問題がないことを確認しました。開発メンバーはついにお客様から、液状磁性材料の正式採用を告げられます。

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STORY_05

お客様からの
正式採用を得た後
社内の量産体制を整備して
事業化を実現

正式採用になったことを受け、開発メンバーはラボレベルで生み出した試作品を、いかに工場で量産していくかを検討することになります。ここまでは研究開発部門の社員だけだったため、新たに量産化検討のスペシャリストとして技術部門の社員をメンバーに加えました。液状磁性材料の量産に使用する製造設備を新たに調達し、どのような工程をどのような順で組み合わせるか、社内でも初の試みのため、手探りで道筋を探ることになりました。当初の段階で浮き彫りになった問題は、製品の品質が安定しないことでした。工程の見直しや原材料の品質向上などのトライ&エラーを繰り返し、ようやく製品規格を確定はスケジュールに間に合いました。その後、人員配置も含めて社内の量産体制を整えた当社は、ようやく自社商品のひとつとして、液状磁性材料の出荷を開始しました。これにより、お客様側では高性能CPUを搭載しつつも、消費電力を抑えられる半導体パッケージの生産を実現させるというモデルの確立に貢献することができました。

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STORY_06

味の素ファインテクノの
今後の成長を支えつつ
環境負荷低減という地球規模の課題にも寄与する

本プロジェクトに携わったメンバーの功績は、ABF以外の分野で新規事業を成立させたという自社への貢献にとどまりません。現在、通信キャリア各社は5G基地局の増設に注力しており、データサーバや一般消費者が使用するデバイスも、現在進行形で高性能化が進んでいます。当社で開発した液状磁性材料は、これら全てに搭載される半導体パッケージの省電力化を実現させ、地球規模の環境負荷低減に貢献していることを意味しています。かつ、ネットワークインフラの高速化・大容量化は、今後も進展していく見通しで、事業としての伸びしろも大きく見込めます。液状磁性材料のさらなる進化は、当社の成長路線を支えるだけでなく、社会貢献の拡大にも繋がっています。

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